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鍋島 — 有明海の宿場町・肥前浜宿で、佐賀県の人たちが名づけた日本酒

  • Sake JP 編集部
鹿島市浜町に建つ富久千代酒造の一号蔵。黒ずんだ板張りの外壁に格子の窓が並び、瓦屋根がかかる。建物の角の前を道路が通っている
鹿島市浜町にある富久千代酒造の一号蔵です。Peka / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

こんな人におすすめ

  • 佐賀・長崎を旅する途中で、古い町並みを歩きながら酒蔵の外観を見てみたい人(富久千代酒造は、ふだんの蔵見学を受け付けていません)
  • 3月の「鹿島酒蔵ツーリズム」に合わせて旅程を組み、蔵元の有料試飲に並んでみたい人
  • 酒米(sake rice、日本酒づくりに向く米)の品種ごとに飲み比べてみたい人
  • 蔵が営む宿に泊まり、料理と一緒に日本酒を味わいたい人

富久千代酒造について

富久千代酒造(Fukuchiyo Shuzo)は、佐賀県鹿島市(Kashima)の浜町(Hamamachi)にある酒蔵です。創業は1923年で、2023年に100周年を迎えました。銘柄は「鍋島(Nabeshima)」です。

蔵見学は、ふだんは受け付けていません。蔵での日本酒の販売もしていません(2026年9月30日確認)。鍋島は、蔵が認めた特約店(蔵と特約を結んだ酒販店)だけで扱われています。

鍋島は、2011年のインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のSAKE部門で、最高賞の「チャンピオン・サケ」に選ばれています。令和7酒造年度全国新酒鑑評会(酒類総合研究所・日本酒造組合中央会)でも金賞を受けています(2026年5月20日発表)。

白壁と茅葺きの町、肥前浜宿

蔵がある鹿島市の浜町は、有明海(Ariake Sea)に面しています。浜町の一帯は「肥前浜宿(Hizen Hamashuku)」と呼ばれます。江戸時代に長崎街道の宿場町として整えられ、その後は日本酒や醤油などの醸造で栄えた町です。

肥前浜宿には、白壁の建物や大きな酒蔵が並ぶ約600メートルの「酒蔵通り」と、茅葺き屋根の民家が集まる町並みがあります。この2つは、2006年に国の重要伝統的建造物群保存地区(歴史的な町並みを守るために国が選ぶ地区)に選ばれました。多良岳(Taradake)山系の地下水に恵まれた鹿島市では、江戸時代から日本酒がつくられてきました。市内では、いまも6つの蔵(5つの酒造会社)が日本酒をつくっています。

富久千代酒造は、かつての精米所を当時の土壁などを残して改装し、2014年にギャラリーにしました。この建物は国の登録有形文化財です。

県民が名前を選んだ「鍋島」

富久千代酒造の銘柄は、以前は「泉錦(Izuminishiki)」でした。3代目で杜氏(toji、日本酒づくりの責任者)の飯盛直喜(Iimori Naoki)さんが、地元に愛され誇りにされる新しい銘柄をめざしてゼロからつくり、1998年に売り出したのが鍋島です。酒販店の若い経営者4人と一緒に、構想から3年をかけました。

名前は新聞での公募で、佐賀県の人たちに選んでもらいました。江戸時代に約300年にわたって佐賀藩を治めた鍋島家に由来します。

蔵は、めざす日本酒を「自然体の酒」と呼んでいます。

単に「香りが高い」「辛い」だけでなく、やさしく五感を刺激し馴染んでいく「自然体の酒」を目指し造っています。 ——富久千代酒造 公式サイト「育む・繋ぐ酒造り」より

日本酒で「辛い(karai)」「辛口(karakuchi)」というのは、塩辛さや香辛料の辛さではなく、甘さが少なくすっきりした味わいを指す言葉です。麹(koji、蒸した米に麹菌を育てたもの)は手でつくっています。

米の名前で選ぶ鍋島

鍋島には、使う酒米の品種を商品名に入れたものが多くあります。山田錦(Yamada Nishiki)、雄町(Omachi)、愛山(Aiyama)、山田穂(Yamadaho)、きたしずく(Kitashizuku)、五百万石(Gohyakumangoku)などです。たとえば純米吟醸には、山田錦・雄町・愛山・きたしずく・五百万石の名前を付けた商品があります。原料や精米歩合は商品ごとに違うため、種類と米の名前はラベルの表示でご確認ください。

蔵の商品一覧から、種類の違う3つを挙げます。価格は蔵の商品一覧の表示です(2026年9月30日確認)。

  • 鍋島 特別純米酒 — 米と米麹と水だけでつくり、米の外側を4割以上削った「特別純米酒(tokubetsu junmai-shu)」です。720mlで1,980円
  • 鍋島 純米吟醸 山田錦 — 米と米麹と水だけでつくり、米の外側を4割以上削って低温でゆっくり発酵させた「純米吟醸(junmai ginjo)」です。酒米は山田錦です。720mlで2,300円
  • 鍋島 純米大吟醸 山田錦45% — 米と米麹と水だけでつくり、米の外側を半分以上削った「純米大吟醸(junmai daiginjo)」です。720mlで3,680円

鏡文字のラベル「隠し酒」

「鍋島 隠し酒」は、「鍋島」の文字を左右反転させた鏡文字をラベルに使った商品で、通称は「裏鍋島(Ura-Nabeshima)」です。最初に商品にしたのは、2024年の時点で約20年前です。もとは搾りの最初と最後に出る日本酒を集めたものでした。現在は、ふだんの純米吟醸を4種類以上ブレンドしてつくっています。

出荷は年に3回で、回ごとにブレンドの割合を変えています。1月に出荷する1回目だけが、加熱処理(火入れ)をしていない生酒(namazake)です。2022年から、2回目と3回目は火入れをして出荷しています。

酒蔵の案内

ふだんの見学と販売

富久千代酒造は、蔵見学を受け付けていません。蔵に直売所はなく、試飲もできません(2026年9月30日確認)。蔵は、日本酒をネットで売ることも、蔵から直接小売りすることもしていません。

酒蔵通りを歩けば、蔵の外観は道から見られます。肥前浜宿には、日本酒を販売している別の蔵もあります。

鹿島酒蔵ツーリズム

鹿島市では、3月の週末に「鹿島酒蔵ツーリズム(Kashima Sakagura Tourism)」が開かれます。市内の酒蔵を無料の巡回バスや徒歩でまわる催しです。直近の開催は2026年3月28日・29日の10:00〜16:00で、参加者は運営協力金500円の協力を求められました。次の日程は公式の告知でご確認ください。

2026年の開催で、富久千代酒造が行ったのは次のものです。

  • 日本酒の有料試飲と販売(整理券が必要な入れ替え制。日本酒の種類によって数量に限りがあります)
  • 有料の日本酒バー
  • 限定酒の販売(購入には整理券が必要。販売は蔵とは別の場所です)

整理券は当日の朝7時15分ごろから富久千代酒造の前で配る予定とされ、事前の予約はできませんでした。2024年の開催時には、蔵の中は自由に見て回れませんでした。

蔵が営む宿とレストラン

富久千代酒造は、肥前浜宿の歴史的な建物を改修した宿「御宿 富久千代(Onyado Fukuchiyo)」を営んでいます。4つの建物があり、どれも1棟に1組だけが泊まります。

  • 「本邸」「離れ」に泊まる人は、希望すれば、ふだんは公開していない富久千代酒造の蔵見学に案内してもらえます。ギャラリーでのテイスティングもあります
  • 本邸の中のレストラン「草庵 鍋島(Soan Nabeshima)」では、日本料理のコースに、20種類以上の鍋島から料理に合わせた日本酒が出されます。夕食だけの利用もでき、料理は38,500円(税・サービス料込み)からです。席は宿泊客が優先で、夕食は17:00に全員一斉に始まります。中学生未満は利用できません
  • 草庵 鍋島では、鍋島を1人3本まで買えます。買える商品は時期によって違います

料金と条件は2026年9月30日に確認したものです。予約は宿の公式サイトからです。英語の案内ページもあります。

行き方

住所:〒849-1322 佐賀県鹿島市浜町1244-1

  • 電車:最寄り駅はJR長崎本線の肥前浜(Hizen-Hama)駅です。駅から酒蔵通りまでは歩いて約6分です。博多駅から肥前鹿島(Hizen-Kashima)駅までは特急「かささぎ(Kasasagi)」で約1時間〜1時間10分です(直通の特急は1方向に1日5本前後)。肥前鹿島駅で普通列車に乗り換え、肥前浜駅まで約5分です
  • 周辺:祐徳稲荷神社(Yutoku Inari Shrine)から車で約6分です

所要時間は2026年9月時点の目安です。列車の時刻はJR九州でご確認ください。本数の少ない区間があるため、往路と復路の最終便まで確かめておくと安心です。

営業日や見学の受け入れは変わることがあります。訪ねる前に蔵の公式情報をご確認ください。

富久千代酒造のお酒の買い方

鍋島を扱うのは、蔵が認めた特約店だけです。蔵の直売所も、公式オンラインショップもありません。例外は、宿のレストラン「草庵 鍋島」での販売と、鹿島酒蔵ツーリズムの期間中の販売です。

鍋島を扱う特約店

蔵は特約店の一覧を公式サイトで公開しています。国内は北海道から鹿児島まで117店で、佐賀県・福岡県の店が多く載っています。一覧から、旅の途中で寄りやすい店を選んでいます(2026年9月30日確認)。

地域 店名 所在地 定休日
鹿島(肥前浜宿) ありあけ酒店 佐賀県鹿島市浜町299-2 Google マップで開く なし
鹿島 小楠酒店 佐賀県鹿島市大字森950-7 Google マップで開く 水曜日
佐賀市 石丸酒店 佐賀県佐賀市城内2-12-15 Google マップで開く 1月1日
福岡市・博多 住吉酒販 本店 福岡県福岡市博多区住吉3-8-27 Google マップで開く 日曜日
福岡市・博多 永久和洋酒店 福岡県福岡市博多区大博町3-31 Google マップで開く 日曜・祝日は13:00から
長崎市 横田酒店 長崎県長崎市本石灰町1-7 Google マップで開く 日曜日、祝日
東京・銀座 銀座君嶋屋 東京都中央区銀座1-2-1 紺屋ビル1階 Google マップで開く 年始
東京・恵比寿 恵比寿君嶋屋 東京都渋谷区恵比寿南1-6-1 アトレ恵比寿 西館4階 Google マップで開く アトレ恵比寿に準じる
東京・浅草 酒の大桝 東京都台東区浅草4-22-9 Google マップで開く なし
大阪 酒蔵 なかやま 大阪府大阪市北区本庄東2-15-2 Google マップで開く 日曜日、祝日
京都 鵜飼商店 京都府京都市上京区大宮通寺之内上ル3丁目 北仲之町516 Google マップで開く 日曜日

ほかの店と各店の電話番号は、一覧でご確認ください。一覧には、韓国・中国(上海)・香港・台湾・シンガポール・イギリス・アメリカ・メキシコ・カナダの取扱先も載っています。

買うときの注意

  • 取扱いの有無と在庫は店によって違います。限定品や季節の商品は入荷しないこともあるため、訪ねる前に店へご確認ください。
  • 鍋島には多くの商品があり、原料や造りは商品ごとに違います。種類はラベルの表示でご確認ください。
  • 海外へ持ち帰る場合:100mlを超える瓶は、保安検査前の手荷物には入れられません。預け入れ荷物にするか、保安検査後の免税店でお求めください。乗り継ぎがある場合と、到着する国の持ち込み上限は事前にご確認ください。→ 旅のヒント

酒蔵情報

項目 内容
蔵名 富久千代酒造有限会社(Fukuchiyo Shuzo Co., Ltd.)
創業 1923年(大正12年)
所在地 〒849-1322 佐賀県鹿島市浜町1244-1 Google マップで開く
電話 0954-62-3727(FAX 0954-62-6638)
代表銘柄 鍋島(Nabeshima)
公式サイト https://nabeshima.biz/
蔵見学 不可(御宿 富久千代の「本邸」「離れ」の宿泊客は、希望すれば案内あり)
直売所 なし(試飲も不可)
取扱店の一覧 公式サイトで公開(国内117店・2026年9月30日確認)
英語対応 公式サイトに英語ページあり(自動翻訳と明記)。蔵での英語対応は公表されていません