コンテンツへスキップ

王祿 — 神話の里・東出雲で、濾過をせず、火入れもできるだけしない日本酒を造る

  • Sake JP 編集部
木々に囲まれた小道に、しめ縄を渡した2本の石柱と石碑が立つ黄泉比良坂の伝説地
松江市東出雲町揖屋にある、黄泉比良坂の伝説地です。ChiefHira / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

こんな人におすすめ

  • 蔵を訪ねるのではなく、専門の酒販店で探して飲むことを旅の楽しみにできる人(王祿酒造は、蔵見学・試飲・販売を一年を通して行っていません)
  • 濾過をせず、加熱処理(火入れ)もできるだけしない日本酒に興味がある人
  • ラベルの印の読み方を知って、店で1本を選んでみたい人
  • 出雲の神話の舞台を歩いてみたい人

王祿酒造について

王祿酒造(Ouroku Shuzo)は、島根県松江市(Matsue)の東出雲町揖屋(Higashi-izumo, Iya)にある小さな蔵です。江戸時代の終わりごろから日本酒をつくっています。銘柄は「王祿(Ouroku)」です。古代中国で酒を「天の美禄」と呼んだことにちなみ、数多くの美禄の中でも常に王者の風格を持つ日本酒でありたいという願いを込めて、3代目の平太郎が名づけました。

杜氏(toji、日本酒づくりの責任者)以下6人の蔵人(kurabito、日本酒をつくる職人)が日本酒をつくり、6代目の石原丈径さんが率いています。

蔵見学はできません。蔵は、公式サイトで次のように書いています。

※蔵見学、試飲、小売販売等は、年間通して一切しておりません。 ——王祿酒造 公式サイト「COMPANY」より

蔵から直接送ってもらうこともできません。王祿は、蔵が認めた特約店(蔵と特約を結んだ酒販店)で買う日本酒です。

神話の里と、上意東の山田錦

揖屋は、日本の神話に縁の深い土地です。『古事記』に出てくる「黄泉比良坂(Yomotsu Hirasaka)」は、死者の国(黄泉の国)と、この世との境とされる坂です。イザナギノミコトが亡くなった妻のイザナミノミコトを訪ねて、黄泉の国へ向かった入口と伝えられています。その伝説地が揖屋にあり、1940年に建てられた石碑が立っています。近くには、イザナミノミコトを祀る揖夜神社(Iya Shrine)もあります。

蔵のある東出雲町で国道9号線をはさんだ南東の上意東(Kami-ito)地区は、昔から稲がよく育つ地区でした。この地区の農家のグループが、酒造好適米(sake rice、日本酒づくりに向く米)の「山田錦(Yamada Nishiki)」づくりに取り組みました。蔵は1997年、その米を初めて「丈径(Takemichi)」の原料に使いました。2026年9月30日時点で、王祿の多くの商品は、上意東で育った山田錦だけで造られています。

2キロ先から引いた「黄金井戸」

1962年、4代目の陽三は、蔵の井戸の水に満足できず、県の工業試験場に水の調査を頼みました。見つかったのは中国山地から湧く水で、鉄分やアンモニアを含まず、カルシウムとマグネシウムを多く含んでいました。

水脈は蔵から約2キロ離れていました。陽三は私財を手放して水道管を地下に埋め、国道9号線と鉄道の線路の下をくぐらせて、蔵まで水を引きました。そして「黄金を積んでも価値がある」として「黄金井戸」と名づけました。いまも1日に150トンが湧き、仕込みから器具の洗浄まで、すべてこの水を使っています。

濾過せず、できるだけ火入れしない

王祿の日本酒には、蔵が守っている決まりがいくつかあります。

  • 無濾過:炭などで濾過しません。瓶の中に白いものが浮いたり沈んだりすることがあります。これは「おり(ori)」と呼ばれる日本酒の成分で、品質の異常ではありません
  • 生、または生詰:火入れをするのは、水を加えた生詰めと、原酒の生詰めの2種類だけで、どちらも瓶に詰めたあとに1回だけです。ほかの種類は、火入れをしない「生酒(namazake)」です
  • 全量瓶貯蔵:できた日本酒はすぐ瓶に詰め、すべて冷蔵コンテナで0℃未満に冷やして保管しています
  • ブレンドしない:同じ銘柄・同じ種類でも、仕込んだタンクによって成分が少しずつ違います

特約店も、王祿を-5℃の冷蔵庫で保管しています。買ったあとは家庭の冷蔵庫に入れ、早めに飲むよう蔵は求めています。

ラベルの星印で種類を読む

「丈径」「溪(Kei)」「超王祿(Chou Ouroku)」「出雲麹屋(Izumo Koujiya)」などの銘柄は、裏のラベルに種類の表示がありません。種類は、表のラベルの左上にある星印(黒い星と白い星)の数と色で見分けます。

  • 星印の数が奇数なら生酒、偶数なら生詰め(瓶に詰めたあと1回だけ火入れ)です
  • 1つのタンクから1〜5種類の日本酒を取り分けており、星印が多いほど取れる量が少ない日本酒です
  • 裏のラベルの右上には、仕込んだ年度、仕込みの番号、限定本数(限定品のみ)が印字されています

たとえば「丈径」は、6代目が蔵に入った1995年に、1人で小さなタンク1本を仕込んだのが始まりの銘柄です。米と米麹と水だけでつくり、米の外側を4割以上削って低温でゆっくり発酵させた「純米吟醸(junmai ginjo)」で、上意東の山田錦を使っています。「超王祿」は、米と米麹と水だけでつくる「純米酒(junmai-shu)」です。原料や造りは商品ごとに違うため、種類はラベルの星印と表示でご確認ください。

酒蔵の案内

王祿酒造は、蔵見学・試飲・販売を一年を通して行っていません(2026年9月30日確認)。蔵を訪ねても、日本酒を買うことはできません。

蔵のある揖屋では、次の場所を訪ねることができます。

  • 揖夜神社:JR揖屋(Iya)駅から歩いて約10分です
  • 黄泉比良坂:JR揖屋駅から車で約5分、歩いて約20分です

所要時間は2026年9月時点の目安です。

王祿酒造のお酒の買い方

王祿は、蔵が認めた特約店で販売されています。蔵の直売所も、公式のオンラインショップもありません。蔵は、特約店以外で買った王祿については責任を負えないとしています。

王祿を扱う特約店

蔵は特約店の一覧を公式サイトで公開しています。北海道から宮崎県まで40店あまりが載っています。一覧から、旅の途中で寄りやすい店を選んでいます(2026年9月30日確認)。

地域 店名 所在地
松江 槇戸天狗堂 島根県松江市東奥谷町373 Google マップで開く
米子 米子高島屋別館 フードスタジオカクバン 鳥取県米子市角盤町1-27 Google マップで開く
岡山 ワインと地酒武田 岡山幸町店 岡山県岡山市北区幸町3-2-1F Google マップで開く
広島 酒商山田 エディオン蔦屋家電店 広島県広島市南区松原町3-1-1 EKICITY HIROSHIMA Google マップで開く
広島 酒商山田 本店 広島県広島市南区宇品海岸2-10-7 Google マップで開く
東京・銀座 IMADEYA GINZA 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX B2F Google マップで開く
東京・銀座 銀座君嶋屋 東京都中央区銀座1-2-1 紺屋ビル1F Google マップで開く
東京・池袋 酒商山田 西武池袋店 東京都豊島区南池袋1-28-1 Google マップで開く
大阪・梅田 山中酒の店 エキマルシェ大阪店 JR大阪駅1F
大阪 山中酒の店 大阪府大阪市浪速区敷津西1-10-20 Google マップで開く
京都 木になる酒店 TANE 京都府京都市下京区高材木町228 京阪ビル3階 Google マップで開く
京都・伏見 大崎商店 京都府京都市伏見区三栖半町479 Google マップで開く

ほかの店と電話番号は、一覧でご確認ください。一覧に載っている東京・赤坂の鈴木三河屋は、2024年7月末に閉店しています。

買うときの注意

  • 取扱いの有無と在庫は店によって違います。限定品や季節の商品は入荷しないこともあるため、訪ねる前に店へご確認ください。
  • 蔵は、買ったあとは冷蔵庫で保管するよう求めています。
  • 価格は特約店ごとに違います。
  • 海外へ持ち帰る場合:100mlを超える瓶は、保安検査前の手荷物には入れられません。預け入れ荷物にするか、保安検査後の免税店でお求めください。乗り継ぎがある場合と、到着する国の持ち込み上限は事前にご確認ください。→ 旅のヒント

酒蔵情報

項目 内容
蔵名 王祿酒造有限会社(Ouroku Shuzo Co., Ltd.)
創業 江戸時代末期に日本酒づくりを始めました
代表者 石原丈径(6代目)
所在地 〒699-0101 島根県松江市東出雲町揖屋484 Google マップで開く
電話 0852-52-2010(FAX 0852-52-2011)
代表銘柄 王祿(Ouroku)
仕込み水 蔵から約2キロ先の湧き水「黄金井戸」
公式サイト https://www.ouroku.co.jp/
蔵見学 不可(試飲・小売もなし)
直売 なし(蔵からの直送もなし)
取扱店の一覧 公式サイトで公開(2026年9月30日確認)
英語対応 公式サイトの一部に英語表記あり。蔵での英語対応は公表されていません