
こんな人におすすめ
- 奈良を旅する途中で、江戸時代の町のかたちが残る御所まちを歩いてみたい人(油長酒造は、一般の蔵見学を受け付けていません)
- 火入れも加水もしない、搾ったままの日本酒を飲んでみたい人
- 同じ銘柄のなかで、米の品種や削り方の違いを飲み比べてみたい人
- 奈良・大阪・東京の酒販店で、奈良の日本酒を探したい人
油長酒造について
油長酒造(Yucho Shuzo)は、奈良県御所市(Gose)の「御所まち(Gose-machi)」にある酒蔵です。創業は1719年(享保4年)です。代表銘柄は「風の森(Kaze no Mori)」で、ほかに「水端(Mizuhana)」「鷹長(Takacho)」をつくっています。
一般の蔵見学は受け付けていません。蔵での日本酒の直接販売も、通常はしていません(2026年9月30日確認)。風の森は、蔵が選んだ正規パートナー酒販店だけで扱われています。
碁盤の目の町、御所まち
「御所」は「ごせ(Gose)」と読みます。御所市は奈良盆地の南の端にあります。蔵から西には、北から二上山、葛城山(Mt. Katsuragi)、金剛山(Mt. Kongo)が並び、奈良と大阪を隔てています。
御所まちは、江戸時代の初めにつくられた陣屋町(領主の役所を中心にした町)です。1本の川をはさんで、西岸に商人の町「西御所」、東岸に寺を中心にした町「東御所」ができました。江戸時代の検地絵図(土地を調べて描いた地図)がいまも使えるほど、道の配置が残っています。家と家の間を流れる「背割り下水」という水路も、ほぼ当時の姿です。
江戸時代の御所まちでは、菜種などから油を搾る仕事、薬づくり、日本酒づくり、藍染めが盛んでした。油長酒造も、もとは「油屋長兵衛」として油を搾っていました。屋号の「油長」はそこから来ています。創業の年は、1719年に酒道具を売り買いした古文書にもとづいています。
地元で飲んでもらうために生まれた「風の森」
1970年代から1990年代まで、油長酒造は大量生産に力を入れ、つくった日本酒の多くを大手の酒造会社に売っていました。地元には、おもな販売先を持っていませんでした。
そこで12代目の山本長兵衛さんは、ふだんは蔵の人しか口にできない搾りたての生酒を、地元で売ることにしました。御所の風の森峠の近くで育てられていた米「秋津穂(Akitsuho)」を使い、1998年に売り出したのが風の森です。名前は、葛城山のふもとにある風の森峠(Kaze no Mori pass)から取りました。現在の蔵主は、2019年の創業300年を機に「長兵衛」の名を継いだ13代目です。
風の森は、次の2つを続けています。
- 搾ったあとに、ろ過も水を加えることもしない
- 加熱による殺菌(火入れ)をしない生酒(namazake)として出す
1998年の発売から、この造り方を続けています。開けたばかりの瓶には、発酵のときに生まれた炭酸ガスが溶けていて、口の中で細かい泡を感じることがあります。数日たつとガスは抜け、米の甘みとうまみ、果物のような香りと酸味が前に出てきます。瓶は720mlだけです。
米の品種と削り方で選ぶ
風の森の米は、約8割が奈良県産の秋津穂・露葉風(Tsuyuhakaze)・奈々露(Nanatsuyu)です。秋津穂は全量が地元の契約農家で育てられています。露葉風は、いまは奈良県でしか育てられていない酒米(sake rice、日本酒づくりに向く米)です。奈々露は、2024年に奈良県で初めて開発された酒米です。残りの約2割は、兵庫県の山田錦(Yamada Nishiki)・愛山(Aiyama)と、岡山県の雄町(Omachi)です。
油長酒造は、どの商品にも「吟醸」「大吟醸」の表示を使いません。精米歩合にかかわらず、米と米麹と水だけでつくる「純米酒(junmai-shu)」と表示しています。精米歩合は商品ごとに表示しています。精米歩合は、削ったあとに残った米の割合です。
- 657シリーズ — 精米歩合65%。秋津穂と奈々露の2種類です
- 507シリーズ — 精米歩合50%。米の外側を半分削っています。秋津穂と露葉風の2種類です
- 807シリーズ — 精米歩合80%。米の外側を2割削っています。秋津穂・露葉風・山田錦・雄町・愛山の5種類です
最初の風の森から続く「秋津穂657」を、蔵はこう紹介しています。
瓜や洋梨のような香り、甘みや複雑味が共存したその味わいは、まさに風の森と言える味わい。 ——油長酒造 公式サイト「風の森」より
奈良の古い造り方を重ねる
奈良の菩提山正暦寺(Shoryakuji)では、乳酸菌を使った「そやし水」と、それを使って酒母(日本酒の発酵のもとになる酵母を育てたもの)をつくる「菩提酛(bodaimoto)」という技法が生まれたとされています。油長酒造はこの技法を自分たちの日本酒づくりに取り入れています。風の森のうち「ALPHA」と名のつくシリーズは、2022年の醸造から、すべて菩提酛でつくっています。「鷹長」も菩提酛の純米酒です。
2021年には、創業のころの蔵を改修した「享保蔵(Kyoho-gura)」で、水端の醸造を始めました。古い文献をもとに、すべて大きな甕で仕込んでいます。2024年には、葛城山のふもとの棚田のなかに「葛城山麓醸造所(山麓蔵)」を開き、葛城山のふもとで育った秋津穂をあまり削らずに(精米歩合約90%)「S風の森」をつくっています。
仕込み水は、蔵の敷地にある深さ約100メートルの井戸からくみ上げる、葛城山系の地下水です。硬度250mg/l以上の、とても硬い水です。
酒蔵の案内
見学と販売
油長酒造は、一般の蔵見学を受け付けていません。蔵での日本酒の直接販売も、通常はしていません(2026年9月30日確認)。
例外として、同じ御所まちにある宿「GOSE SENTO HOTEL」に、月に1回の見学つき宿泊プランがあります。内容と日程は、宿(電話 0745-49-0854)へお問い合わせください。
御所まちで風の森に出会う
- 東川酒店(御所市新地町)— 御所まちの酒販店で、蔵の正規取扱店です。営業日は店にご確認ください
- フレンチ アプリュス(A+ à plus)— 油長酒造に併設するフランス料理店です。料理と風の森を合わせて楽しめます。コース料理もあります。営業日は店のInstagramでご確認ください
行き方
住所:〒639-2200 奈良県御所市1160番地
- 電車:最寄り駅は、近鉄の御所(Gose)駅と、JRの御所駅です。どちらの駅からも、御所まちまで歩いて5〜10分ほどです
- 時刻は近畿日本鉄道とJR西日本でご確認ください。本数の少ない時間帯があるため、往路と復路の最終便まで確かめておくと安心です
営業日や見学の受け入れは変わることがあります。訪ねる前に蔵の公式情報をご確認ください。
油長酒造のお酒の買い方
油長酒造の日本酒は、「油長酒造 → 正規パートナー酒販店 → お客様」という流れで売られています。蔵は、生酒の品質を保つため、特徴を説明しながら売ってくれる店に限って扱ってもらっています。
風の森を扱う正規パートナー酒販店
蔵は取扱店の一覧を公式サイトで公開しています。北海道から沖縄まで183店が載っていて、そのうち風の森を扱うのは158店です(2026年9月30日確認)。旅の途中で寄りやすい店を選びました。
| 地域 | 店名 | 所在地 |
|---|---|---|
| 御所 | 東川酒店 | 奈良県御所市新地町121 Google マップで開く |
| 奈良市 | なら泉勇斎 | 奈良県奈良市西寺林町22 Google マップで開く |
| 大阪・梅田 | 浅野日本酒店 UMEDA | 大阪府大阪市北区太融寺2-17 Google マップで開く |
| 大阪・心斎橋 | グランセルクル 大丸心斎橋店 | 大阪府大阪市中央区心斎橋1-7-1 大丸心斎橋店本館B2F Google マップで開く |
| 大阪 | 酒のやまもと 大阪店 | 大阪府大阪市中央区島之内2-6-32 Google マップで開く |
| 京都 | にしむら酒店 | 京都府京都市左京区北白川久保田町3 Google マップで開く |
| 東京・銀座 | IMADEYA GINZA | 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX B2F Google マップで開く |
| 東京・銀座 | 銀座君嶋屋 | 東京都中央区銀座1-2-1 紺屋ビル1F Google マップで開く |
| 東京・新宿 | 酒商山田 京王百貨店新宿店 | 東京都新宿区西新宿1-1-4 MB階 Google マップで開く |
| 東京・浜松町 | 浅野日本酒店 HAMAMATSUCHO | 東京都港区浜松町2-11-16 稲葉ビル1F Google マップで開く |
| 東京・浅草橋 | SAKE Street | 東京都台東区柳橋1-11-5 柳橋ビル1F Google マップで開く |
ほかの店は一覧でご確認ください。一覧には、店ごとに扱う銘柄(風の森・水端・S風の森など)が載っています。
買うときの注意
- 取扱いの有無と在庫は店によって違います。限定品や季節の商品は入荷しないこともあるため、訪ねる前に店へご確認ください。
- 風の森には多くの商品があり、米や精米歩合は商品ごとに違います。種類はラベルの表示でご確認ください。
- ラベルに保存温度の表示がある商品は、その表示に従ってください。
- 海外へ持ち帰る場合:100mlを超える瓶は、保安検査前の手荷物には入れられません。預け入れ荷物にするか、保安検査後の免税店でお求めください。乗り継ぎがある場合と、到着する国の持ち込み上限は事前にご確認ください。→ 旅のヒント
酒蔵情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 蔵名 | 油長酒造株式会社(Yucho Shuzo Co., Ltd.) |
| 創業 | 1719年(享保4年) |
| 代表者 | 代表取締役 山本長兵衛(13代目) |
| 所在地 | 〒639-2200 奈良県御所市1160番地 Google マップで開く |
| 電話 | 0745-62-2047(FAX 0745-62-3400)受付 9:00〜17:00(土日祝日を除く) |
| 代表銘柄 | 風の森(Kaze no Mori)/水端(Mizuhana)/鷹長(Takacho) |
| 仕込み水 | 葛城山系の深層地下水(敷地内の井戸) |
| 公式サイト | https://yucho-sake.jp/ |
| 蔵見学 | 不可(GOSE SENTO HOTEL の月1回の見学つき宿泊プランあり) |
| 直売 | 通常なし |
| 取扱店の一覧 | 公式サイトで公開(183店、うち風の森158店・2026年9月30日確認) |
| 英語対応 | 公式サイトに英語ページあり。蔵での英語対応は公表されていません |