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紀土 — 山に囲まれた米どころで、田植えから日本酒をつくる蔵

  • Sake JP 編集部
和歌山県海南市の亀池。緑色の水面の奥に、桜の咲く山と、中島へ渡る吊り橋、池のほとりの和風の建物が見えます
海南市の亀池です。江戸時代に、田に水を引くために造られた池です。KainanCity CP / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons(長辺1280pxに縮小)

こんな人におすすめ

  • 6月の田植え体験や10月の稲刈り体験に合わせて旅程を組み、酒米の田んぼと蔵を訪ねてみたい人(平和酒造は、ふだんの蔵見学を受け付けていません)
  • 和歌山市・東京・大阪で、蔵が営む店に寄って日本酒を飲んでみたい人
  • 日本酒づくりに向く米を、蔵の人たちが自分で育てている日本酒に興味がある人

平和酒造について

平和酒造(Heiwa Shuzo)は、和歌山県海南市(Kainan)の溝ノ口にある酒蔵です。創業は1928年(昭和3年)です。日本酒の銘柄は「紀土(KID)」で、梅酒の「鶴梅」やビールの「平和クラフト」もつくっています。

衛生管理のため、ふだんの蔵見学は受け付けていません。蔵で試飲できる場所も常設していません(2026年9月30日確認)。蔵を見学できるのは、毎年6月の田植え体験と10月の稲刈り体験に参加したときです。

本社では日本酒を販売しておらず、通信販売もしていません。紀土を味わえるのは、和歌山市の駅ビルと、東京の日本橋兜町、大阪の難波にある、蔵が営む店です。

紀土は、令和7酒造年度全国新酒鑑評会(酒類総合研究所・日本酒造組合中央会)で金賞を受けています。

高野山の水が流れる、山あいの米どころ

和歌山県は本州の南にあり、みかんや梅、柿などの果物の産地として知られる県です。その中で、蔵がある溝ノ口は、古くから稲作が盛んな土地です。集落には小道が多く、田に水を引く溝が道に沿ってめぐっています。

溝ノ口は、昔から「野上谷」と呼ばれてきた地域の一角です。四方を山に囲まれた盆地なので、朝と夕方は厳しく冷え込みます。地下には高野山(Koyasan)の伏流水(地下を流れる水)が通り、井戸水が豊富です。米と、低い気温と、豊富な水がそろうこの土地には、かつて10軒近くの酒蔵がありました。

蔵から西へ約3キロメートルのところには、亀池という大きなため池があります。1710年に、溝ノ口村の出身の井沢弥惣兵衛が、田に水を引くために造った池です。この池のおかげで、周りの10の村の田畑に水が届くようになりました。いまは周りに4キロメートルの遊歩道がある公園で、約2,000本の桜が咲く3月下旬から4月上旬には、さくらまつりが開かれます。

「平和」という名前の由来

平和酒造は、1928年に山本保が創業しました。山本家は代々続く寺の家で、当時の寺の名前から、いまも「超願寺」という屋号で呼ばれることがあります。

第二次世界大戦中、蔵は国の命令で、学童疎開の受け入れなどのために日本酒づくりを休みました。戦後もしばらく、日本酒をつくる免許の再開は認められませんでした。2代目の山本保正は国会へ足を運び、休業していた蔵の再開を求める演説をしました。ようやく再開が許されたとき、平和な時代に日本酒をつくるという思いを込めて、蔵の名前を「平和」にしました。

再開したあとも、蔵は苦労を続けました。昭和60年代(1985〜1989年)までは、瓶に詰めずに京都の大手の酒造会社へ日本酒を売る「桶売り(okeuri)」が中心で、自社の銘柄はわずかに売るだけでした。やがて、自分たちがつくりたい日本酒をつくろうと、自社での販売に力を入れ始めました。

代表取締役社長の山本典正さんは、この転換についてこう書いています。

以前は当社も量産型でやっていましたが、2008年からは質を追求するスタイルに転換しました。 ——山本典正さん(平和酒造 代表取締役社長)、平和酒造 公式サイト「採用情報」より

蔵の人が育てる山田錦

平和酒造では、冬に日本酒づくりをする杜氏(toji、日本酒づくりの責任者)や蔵人(kurabito、蔵で働く職人)が、初夏に酒米の苗を植え、稲刈りまでの田んぼの管理もしています。地域の担い手が少なくなっていることと、稲作農家の出身の若い蔵人の思いが重なって始まった取り組みです。

麹(koji、蒸した米に麹菌を育てたもの)づくりは、すべて人の手で行っています。

田植え体験と稲刈り体験で、参加した人たちと一緒に蔵の田んぼで育てた山田錦(Yamada Nishiki)は、「あがら」というシリーズの日本酒に使われます。

紀土には数量限定の商品もあり、原料や精米歩合は商品ごとに違います。種類はラベルの表示でご確認ください。

酒蔵の案内

田植え体験と稲刈り体験

平和酒造は、毎年6月に山田錦の田植え体験を、10月に稲刈り体験を開いています。場所は海南市溝ノ口の本社の敷地です。大人なら誰でも参加でき、午後の企画に蔵見学が入っています。中学生未満の子どもは、1人につき保護者1人以上が同伴すれば参加できます。

2026年の田植え体験(6月21日)は、次の内容でした。

  • 午前だけの参加(田植え体験と昼食)は3,000円、1日の参加(午後の蔵見学などとバーベキューを含む)は6,000円
  • 午前だけの参加で希望する人は、受付のあとに蔵見学がありました
  • 参加費は申し込みのときに、PayPal を通したクレジットカードで前払いします
  • 汚れてもよい服、タオル、着替えを持参します。着替えは、蔵の中に泥を持ち込まないために必ず要ります
  • 蔵見学だけ、バーベキューだけの参加はできません

2026年の稲刈り体験は、10月18日の開催として9月に告知されました。毎年の日程と内容は、蔵の公式サイトの告知でご確認ください。どちらの体験も、天候によって中止や内容の変更があります。

蔵が営む店

蔵が営む店は次の3つです。どの店も、紀土・鶴梅・平和クラフトを扱っています。

  • 平和酒店(和歌山市) — 平和酒造の最初のアンテナショップです。商品の販売のほか、造り手と交流できるバースペースがあります。南海和歌山市駅に直結する駅ビル「キーノ和歌山」の2階にあります。営業時間は11:00〜20:00(飲食のラストオーダーは19:30)で、定休日はキーノ和歌山に準じます。現金は使えず、キャッシュレス決済だけです
  • 平和どぶろく兜町醸造所(東京・日本橋兜町) — 2022年6月に開いた、できたてのどぶろく(doburoku、もろみをこさずに仕上げたお酒)を、造り手が自ら出すブルワリーパブ(醸造所を兼ねた酒場)です。商品の販売もしています。営業時間は平日13:00〜22:30、土曜12:00〜22:30、日曜と連休の最終日12:00〜21:00で、定休日はありません。現金は使えず、キャッシュレス決済だけです
  • 平和どぶろく難波醸造所(大阪・難波) — 大阪高島屋の地下1階・西ゾーンにある、兜町と同じ形式の店です。定休日は髙島屋に準じます。営業時間と支払い方法は店のページでご確認ください

営業時間と条件は2026年9月30日に確認したものです。

行き方

住所:〒640-1172 和歌山県海南市溝ノ口119

  • 電車とバス:最寄りの駅はJR海南(Kainan)駅です。駅からはタクシーか、大十バスの「オレンジバス」に乗り、「オークワ海南野上店」の停留所で降りて歩きます。バスの時刻は大十バスでご確認ください。本数の少ない路線なので、往路と復路の最終便まで確かめておくと安心です
  • 車:阪和自動車道の海南東インターチェンジから向かいます

営業日や見学の受け入れは変わることがあります。訪ねる前に蔵の公式情報をご確認ください。

平和酒造のお酒の買い方

平和酒造は、本社での販売も通信販売もしていません。紀土は、各地の酒販店と、酒販店が運営するオンラインショップで扱われています。

蔵は、取扱店の一覧を公開していません(2026年9月30日確認)。近くの取扱店を知りたいときは、蔵のお問い合わせフォームに、住んでいる(または滞在する)市区町村を書いて問い合わせます。

上の「蔵が営む店」の3店は、どこも紀土を扱っています。和歌山市の平和酒店と東京の兜町醸造所では、商品を買うこともできます。

買うときの注意

  • 取扱いの有無と在庫は店によって違います。限定品や季節の商品は入荷しないこともあるため、訪ねる前に店へご確認ください。
  • 紀土には多くの商品があり、原料や造りは商品ごとに違います。種類はラベルの表示でご確認ください。
  • 海外へ持ち帰る場合:100mlを超える瓶は、保安検査前の手荷物には入れられません。預け入れ荷物にするか、保安検査後の免税店でお求めください。乗り継ぎがある場合と、到着する国の持ち込み上限は事前にご確認ください。→ 旅のヒント

酒蔵情報

項目 内容
蔵名 平和酒造株式会社(Heiwa Shuzo Co., Ltd.)
創業 1928年(昭和3年)
代表者 代表取締役社長 山本典正
所在地 〒640-1172 和歌山県海南市溝ノ口119 Google マップで開く
電話 073-487-0189(FAX 073-487-4641)
代表銘柄 紀土(KID)
公式サイト https://www.heiwashuzou.co.jp/
蔵見学 ふだんは不可(6月の田植え体験・10月の稲刈り体験の参加者は見学あり)
直売所 本社ではなし。和歌山市の「平和酒店」と東京の「平和どぶろく兜町醸造所」で販売。大阪の「平和どぶろく難波醸造所」でも紀土を扱う
取扱店の一覧 公開されていません(2026年9月30日確認)。問い合わせフォームで案内
英語対応 公表されていません